従業員の為に導入した前払い・・・その落とし穴

従業員の為に導入したはずの前払い制度が従業員に重い負担を与えてしまった、企業に大きなダメージを受けたなどという落とし穴があります。

前払い制度の導入を検討している企業は、前払い制度の落とし穴について正しく理解しておく必要があるのです。

そこで、ここでは前払い制度を導入する上で知っておきたい、制度の落とし穴についてお話ししたいと思います。


前払いした直後に従業員がバックレてしまった

企業にとって最も恐ろしいのが給料を前払いした後に従業員がいなくなってしまう、いわゆるバックレです。
これをされると、企業には前払いした分の損害だけではなく、心理的にも大きな負担がかかります。それは企業の経営者だけではなく、一緒に働いていた従業員にも同様です。さらに、抜けた分の従業員の補填も考えなければならず、企業にとっては最も頭の痛いことです。

特に、人手不足が深刻で従業員の入れ替わりが激しい、流通業や飲食業にバックレが多く発生しがちです。一定の仕事のスキルや経験があればどこでも働けることも、バックレを多くしている要因になっています。

給料の前払いは、前提としてお互いに信頼関係が無ければ成り立ちません。しかし、給料の前払いを多く活用するのが、中途採用で採用したばかりでお金がない従業員であることが多く、信頼関係を築くのが難しくなっています。 企業側としては、従業員をしっかりと見定める目を持ち、免許証や健康保険証などの身分証明書の確認や、親族などの連絡先を知っておく、住居を確認しておくなどの対策が必要です。もしくは、あらかじめバックレが発生するリスクを考慮に入れておく必要もあるかもしれません。


手数料負担が重くのしかかる

企業が前払い制度を導入する際には、前払いサービスを行う運営会社を利用するケースが多いと思います。

前払い運営会社は、従業員の勤怠を細かく把握し前払いした給料の額や回数などを管理します。その結果、企業内で無駄な手間が大幅に増えることなく、スムーズに前払い制度を導入することができます。

しかし、このようなサービスを利用するためには、従業員が手数料を支払う必要があります。利用手数料は運営会社によって異なりますが毎回5~8%の手数料が課せられるのが一般的で、従業員への負担になることは間違いありません。

もちろん、従業員の定着率を上げるために、企業が前払い手数料を負担するケースもあります。しかし、その際には、手数料の負担が今度は企業に重くのしかかります。従業員が前払い制度を利用しすぎると、企業経営にも影響があるかもしれません。 前払い制度を採用する際には、利用手数料について事前に正しく把握しておく必要があるでしょう。


自社で前払い制度を実施すると細かい勤怠管理が煩雑になる

給料の前払いは、給料の前借りとは根本的に異なります。

前借りは、今月支払われるはずの給料を先に支給する制度です。決まった額を先に支払うだけなので、そこまで手続きが煩雑にはなりません。

しかし、前払いは、従業員の勤怠の実績に合わせて、働いた分の給与額が先行して支払われる仕組みになっています。そのため、従業員の勤怠と前払いした分を正確に記録しておかなければなりません。

ですから、前払い制度を実施するためには、企業内の総務経理社員が自前で行うには限界があります。そこで、給料前払いを運営する運営会社に委託すれば、コストはかかりますが社員の労力を考えればコストパフォーマンスが高いのです。

前払い運営会社を利用すれば、自社で発生する作業は総務経理社員と運営会社とのやり取りのみで済みます。自社で全従業員の細かい勤怠管理や支払い管理を行う必要がありませんから、管理部門の社員数が少ない中小企業に特におすすめと言えるでしょう。


法整備が整っておらず今後の動きは流動的である

実は、給料前払いのサービスは比較的新しいサービスなので、法整備が追い付いていない部分があります。そのため、前払い手数料の金額が妥当か、労働基準法における全額給与払いの原則や直接支払いの原則などと整理がついているかどうかなど、まだ検討の余地が残されています。

そのため、今後も法律が変わる可能性は十分にあるでしょう。法律が改正された結果、せっかく導入した制度が変わってしまう、手数料が増えるなどという懸念もあります。

新しい制度は常に法制度の変更にさらされるため、今後の法整備が待たれます。

もし、前払い制度の導入を検討しているのであれば、法制度の改正情報に注目しておく必要があるでしょう。


まとめ

前払い制度は、特に流通業や飲食業で働く労働者が待ち望んでいる制度です。そして、前払い制度を導入すれば労働者が集まって人手不足も解消できるかもしれず、企業にとっても良い制度です。

しかし、その一方で、上記でご説明したような前払い制度による落とし穴も存在します。このような落とし穴にはまらないようにするためにはどうすれば良いのか、導入する前に前払い制度に関する正しい知識を得るようにしましょう。そして、落とし穴に対する対策を講じておくことで、従業員にも企業にとっても良い影響をもたらす最適な前払い制度を利用することができるはずです。


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